Cases 症例紹介

犬のクッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)とは?

~水をよく飲む、お腹が出てきた、毛が薄くなってきた…それはホルモンの病気かもしれません~

「最近、水をたくさん飲むようになった」
「おしっこの量が増えた」
「お腹だけがぽっこりしてきた」
「毛が薄くなってきた」

このような症状が見られる中高齢犬では、「クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)」という病気が隠れていることがあります。

クッシング症候群は犬の代表的な内分泌疾患の一つで、特に7歳以上の中高齢犬で多く認められます。


クッシング症候群とは?

クッシング症候群とは、副腎から分泌される「コルチゾール」というホルモンが過剰になる病気です。

コルチゾールは本来、

・ストレスへの対応
・血糖値の維持
・免疫反応の調整
・炎症の抑制

など、生きていくために必要なホルモンです。

しかし過剰な状態が長期間続くと、全身にさまざまな悪影響を及ぼします。


クッシング症候群の原因

クッシング症候群にはタイプが存在し、大きく3つに分けることができます。

① 下垂体依存性クッシング症候群(PDH)

最も多いタイプで、全体の約80~90%を占めます。

脳にある下垂体に腫瘍ができ、ACTHというホルモンが過剰に分泌されることで副腎が刺激され、コルチゾールが過剰に産生されます。


② 副腎腫瘍性クッシング症候群(AT)

全体の約10~20%です。

副腎そのものに腫瘍ができ、コルチゾールを過剰に分泌します。良性腫瘍の場合もありますが、悪性腫瘍であることも少なくありません。


③ 医原性クッシング症候群

ステロイド薬を長期間使用することで発症します。

皮膚病や免疫疾患の治療でステロイドを継続している場合には注意が必要です。


このような症状はありませんか?

クッシング症候群では次のような症状がみられます。

多飲多尿

以前よりも水を飲む量が増えたり、夜間の排尿回数が増えたりします。

クッシング症候群で最も多く認められる症状で、90〜95%以上の症例で起こると報告があります。

多飲:>100ml/kg

多尿:>50ml/kg

という定義付けもなされています。


食欲増加

食欲が異常に旺盛になります。

「食べても食べても欲しがる」という相談は非常に多くあります。


お腹がぽっこりする(ポットベリー)

筋肉の萎縮や肝臓の腫大によって、お腹だけが膨らんで見えます。


脱毛・皮膚の変化

・非掻痒性の左右対称性脱毛
・皮膚が薄くなる
・色素沈着
・皮膚感染症の繰り返し

などが特徴です。


パンティング

呼吸筋の萎縮、肝臓の増大による胸腔の圧迫などにより、暑くないのにハアハアする症状が認められることがあります。


筋力低下

散歩を嫌がる
階段を登りたがらない
ジャンプをしなくなる

などの変化がみられます。


放置するとどうなるの?

クッシング症候群は単なる「老化」ではありません。

進行すると、

糖尿病
高血圧
尿路感染症
胆嚢粘液嚢腫
血栓症
慢性的な皮膚感染
筋力低下

などを引き起こすことがあります。


診断方法

血液検査

クッシング症候群では

ALP上昇
・ALT上昇
・高コレステロール血症

がよく認められます。

特にALP上昇は非常に高頻度で認められます(90%以上の症例で高値を示す)。

△クッシング症候群の犬において認められる血液液検査および尿検査の所見とその発生頻度

尿検査

尿比重の低下や尿中コルチゾール/クレアチニン比(UCCR)を評価します。

UCCRが正常であればクッシング症候群の可能性は低いと考えられます。


ホルモン検査

ACTH刺激試験

副腎の反応性を評価します。

容易に実施することができ、1時間で試験は終了する。併発疾患や投薬に影響されにくいため臨床現場で広く活用される試験法です。

低用量デキサメタゾン抑制試験(LDDST)

ACTH刺激試験でクッシング症候群が確定できない時に進む試験です。


レントゲン検査・超音波検査・CT検査

肝臓・副腎の大きさや形状を確認し、

・下垂体性なのか
・副腎腫瘍なのか

を判断します。

超音波検査で副腎の腫大を確認することができます。

また手術適応の評価にはCT検査が非常に有用です。


治療方法

内科治療

現在最も一般的な治療はトリロスタンによる内科治療です。

コルチゾール産生を抑えることで症状の改善を目指します。

治療開始後はACTH刺激試験を用いて投与量を調整します。


外科治療

副腎腫瘍の場合には副腎摘出術が選択されることがあります。

腫瘍の種類や血管への浸潤状況によっては根治が期待できる場合もあります。


まとめ

クッシング症候群は中高齢犬に多くみられるホルモン疾患です。

「歳だから仕方ない」と思われがちな

・多飲多尿
・食欲増加
・脱毛
・お腹が出てきた

といった症状の裏に隠れていることがあります。

放置しておくと上述したように

筋力低下、高血圧、糖尿病、胆嚢粘液嚢腫、血栓症、易感染といったリスクが大きく上昇します。

早期に診断し適切な治療を行うことで、多くのワンちゃんが良好な生活を維持することが可能です。

気になる症状がある場合はお気軽にご相談ください。

阿佐谷ペットクリニックサテライトでは、血液検査・ホルモン検査・超音波検査・CT検査を組み合わせ、一頭一頭に合わせた診断・治療をご提案しています。

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