犬の橈尺骨骨折|小型犬で多い前足の骨折について
はじめに
犬の「橈尺骨骨折(とうしゃっこつこっせつ)」とは、前足にある橈骨(とうこつ)と尺骨(しゃっこつ)が折れてしまう骨折です。
特にトイ・プードルやチワワ、ポメラニアンなどの小型犬(5kg未満で多い)では比較的多くみられる骨折であり、ソファやベッドからの飛び降りなど、日常の些細な動作でも発生することがあります。
当院では、骨折の状態に応じて整形外科手術を含めた治療をご提案しています。
橈尺骨骨折の原因
橈尺骨骨折の原因としては以下のようなものがあります。
- ソファやベッドからの飛び降り
- 抱っこ中の落下
- 滑って転倒した
- 高所からの落下
- 交通事故
- 他の犬との接触
特に若齢犬や小型犬では骨が細いため、比較的軽い衝撃でも骨折することがあります。
犬の橈尺骨骨折では橈骨の遠位1/3での骨折が多いという報告があります。
その原因としては小型犬の橈骨における血管分布が遠位1/3で少ないため、骨折が起きやすく、また治療後の癒合不全も起きやすいとされています。
当グループで実施した症例のうち84%が橈骨遠位1/3での骨折であり、過去の報告とも一致していました。
症状
橈尺骨骨折では以下のような症状がみられます。
- 前足を上げたまま歩けない
- 強い痛み
- 足の腫れ
- 足の変形
- 足を触ると嫌がる
- 元気消失
完全骨折の場合には、患肢へ全く体重をかけられなくなることもあります。
検査
身体検査
患肢の疼痛や腫脹、変形の有無を確認します。
レントゲン検査
骨折部位や骨折の形、ズレの程度を確認します。
また、関節まで骨折が及んでいないかも重要な評価ポイントとなります。
必要に応じて、CT検査を実施する場合もあります。

治療
保存療法
骨折の状態によっては、外固定(包帯やギプスなど)で管理することがあります。
しかし、小型犬の橈尺骨骨折では癒合不全(骨がうまくくっつかないこと)のリスクが比較的高いため、慎重な判断が必要です。
外科治療
当院ではプレートを2枚、骨に対して直交に配置するオルソゴナルプレート法(OP法)を用いて整復を行なっています。
小型犬での骨折は遠位に小さな骨片が生じることが多く、十分な固定のためのスクリュー(ねじ)を設置することが難しいです。
直交に2枚のプレートを設置することで、血流を温存しながら、十分なスクリューを設置でき強固な固定が可能となります。
この方法により、従来の単一のプレートを用いた固定法より大幅な合併症発生率を下げることが可能となりました。

術後・予後
術後は安静管理も非常に重要です。
- リハビリ科外来による術後の疼痛緩和、歩行の正常化
- ケージレスト
- 過度な運動制限
- 定期的なレントゲン検査
などを行いながら骨の癒合を確認していきます。
骨折の程度や年齢にもよりますが、多くの症例では良好な回復が期待できます。
まとめ
犬の橈尺骨骨折は、小型犬で比較的多くみられる整形外科疾患です。
特に若齢の小型犬では、日常生活の中でも発生する可能性があります。
早期診断・早期治療によって、良好な回復・歩行につながるケースも多くあります。
前足を急に挙げる、痛がる、歩けないなどの症状がみられる場合には、お早めにご相談ください。
阿佐ヶ谷ペットクリニックサテライトでは、専門医による整形外科疾患にも対応しております。